初雪恋〜あの日をもう一度君と〜
私はふと崖の前に立った。ポツリ、ポツリと雨が降りだした。
いつの間にか雪が雨に変わったみたいで、それはしだいに大雨になった。
すぐ下にある海が激しく波を打っている。
まるで、全てを呑み込むかのように。
いっそのことこの雨が私を流してしまえばいいのに、と思った。
あと数歩でも前に進めば、下にある海へと落ちるだろう。
ここから飛び降りれば、あなたに会える?
それなら……。
私はゆっくりと一歩ずつ前に進み出した。
…それなら私は喜んでそうする。
あと一歩というところで私はぴたりと足を止めた。
いや、彼はきっとそんなことを望まない。
そう思った私はその場を離れようと足を元来た方へと向けようとした。
――ガラッ…
「…えっ!?」
一瞬、何が起こったのかが分からなかった。
さっきまで見ていたものがどんどん遠ざかる。
違う。
私が遠ざかっているのだ。さっき聴こえたあの音は雨で弱くなっていた崖が崩れた音。
だから今私は…
「きゃあぁぁ!?」
海へと真っ直ぐに落ちている。
抵抗も虚しく、私は海へと落ちた。
冷たい。
苦しい。
息ができない。
必死にもがくが、残念なことに私は泳げない。
どんどん海の底へと落ちていく。
もう、だめ…。
あぁ私死ぬんだな…。
でも、もういいや。
そして、ふっと意識が途切れた。
ただ、最後に意識が途切れる寸前に彼を見たような…気のせいかもしれないけれど、そんな気がした。