君がいるだけで…[番外編短編集]
「今年のお祭り、どうする?」


美月先輩が単刀直入に問う。


『もうそろそろ別々で行ってもいいんじゃないですか?』


慎吾がちょっと気まずそうに答えたけど、
俺もそう思ってた。


みんなで行くのも楽しいけれど、
いつまでもみんな揃うのも無理があるだろうし。


『そうだな。俺も彼女に誘われてるし』

「私もそろそろ雅也と2人で行かないとね」


確かにそうだ。
俺と紗羅、慎吾と美鈴は別にいつものメンバーでも一緒にいられるからいい。


だけど美月先輩はいつも彼氏と行けなかったのだ。


「そうですよね。」


美鈴も納得している。


ただ一人、寂しそうにしているのは
俺の隣に座ってる紗羅だった。


一言も声を発していない。


表情はいつも通りでみんなからは
わからないかも知れないけど。


でも俺も言おうと思ってたことだったから
今回ばかりは。


「じゃ、今年からは別々ね。」

『まぁ同じとこにいるなら会えるしな』

『そうっすね』


そんなことを思っていたら話は進んでいて、


「朔也先輩の彼女見てみたいです!」

「そうよ!私も見たことない!」

『いいよ見なくて。』


話題も変わっていた。


まだ紗羅は寂しそうだったけど、
変わった話題には笑顔を作っていた。


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