君がいるだけで…[番外編短編集]
ドライヤーを終えてリビングに行くと、
いつの間にかお風呂から出てきた真尋くんがソファーに座っていて、びっくりした。


「真尋くんっ!」


ドライヤーのせいか、全然気付かなかった。


『紗羅、まだ怒ってる…?』


珍しくおずおずと聞いて来た真尋くんが、やっと年下に見えた。


「怒ってないよ」


『良かった。おいで?』


腕を広げた真尋くんの所へすぐに駆け寄りたかったけど、

「それはやだ。」

と、即答してみた。


『えっ…』


そしたら、真尋くんの珍しくショックを受けた顔が見れた。


一瞬、高校時代の真尋くんと重なった。


「髪の毛、乾かさないと風邪引いちゃうよ」


そう言ってからドライヤーを持って来て、真尋くんの後ろに回った。


「髪の毛乾かしてからね」


『なんだ、そういうことか…』


真尋くんのそんな呟きは、
ドライヤーの音で聞こえなかった。


< 166 / 219 >

この作品をシェア

pagetop