君がいるだけで…[番外編短編集]
『ただいまー。』


いつもは素っ気ないなりに声が返って来るはずなのだが。


今日はシーンとしている。


一瞬いないのかとも思ったが、
いつも履いてるヒールが玄関にある。


不思議に思いつつリビングに入り、
部屋を見渡してみると。


「美月…?」


同棲している彼女の美月がキッチンで何やら作業をしているのが見えた。


同棲を始めてから、美月は料理を頑張ってくれている。


彼女が料理を作ってくれたことは高校時代一回もなかったので(男としては悲しかったりした)、

同棲をすることにした時は少し心配していた。


後は料理をするキャラに見えなかったりして。


(んなこと言ったら確実に怒られるだろうから言わねーけど。)


まぁ器用だから料理も家事も意外とちゃんとやってくれるんだけど。


だけどあんなに真剣に取り組んでキッチンにいるのは珍しい気がする。


「………」


しかし、何をそんなに真剣にやっているのやら。


『みーつーきー』


「………」


もう一度呼んでみるが、相変わらず返答がない。


おそらく俺が帰って来たらことすら気付いてないな。


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