君がいるだけで…[番外編短編集]
定時になって、残業しない人は早々に会社を退社していく。


俺もしっかり仕事を終えることが出来、何とか退社出来そうだった。


『じゃ、お先。』


『おー、お疲れー』


聖人はもう少しかかりそうなので、それだけ言ってフロアを出た。


『おー、宮城!』


エレベーターを待っていると、上司の中では一番仲良くしてもらっている高木さんが声を掛けて来た。


『お疲れ様です』


いつもは俺を気に入って話掛けてくれるのは嬉しいのだが、今日は声を掛けて欲しくなかったと思う。


何故なら………………、



―――、


『お疲れ~!』


『…お疲れ様です』


ジョッキがぶつかる音と共にそう言った高木さんに密かに溜め息を付きつつそう言葉を返す。


俺は家に帰るはずが、高木さんに居酒屋に連れて来られていた。


そう、高木さんに声を掛けられると、いつもどこかへ連れて行かれてしまう。


だから、今日だけは声を掛けられたくなかったのだが、そう上手くは行かず…
いつものように居酒屋へ付き合わされた。


上司に当たる人なわけで、そう簡単に断るわけには行かないからいつも困っている。


嫌いではないんだけどな。


『(どうしよう、これ…)』


どうにか早いとこ切り上げないと、最後まで付き合わされるぞ。


『高木さん、あの、俺…』


『遠慮せず飲めって、ほら!』


そんな俺の言葉の続きを違う意味で捉えた高木さんはどんどん酒を進める。


はぁ、参った。


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