君がいるだけで…[番外編短編集]
そんなことを思っていた時…


ガラガラっと店のドアが開いて、聞き慣れた声がした。


『あっれー、高木さんじゃないですか!』


そんな声に俺も高木さんも振り向けば、その正体は先ほどまでまだ仕事をしていた聖人だった。


いつものテンションで高木さんの方へ近づいて来た聖人は、俺に気付いてびっくりした顔をする。


おぉ、救世主…!


そんなことを思っていた俺に、聖人が近付いて問う。


『おっい、お前!何してんだよ!?』


『嫌、いつもの感じで高木さんに誘われて断れなかったんだよ。どうしようか困ってたとこだった。』


助かった、と付け足すと、呆れたとでも言うような顔をして俺に言った。


『ほんと見た目によらず言いやつだよな、お前は。』


そんな訳わからないことを言った後、また俺に言った。


『ま、俺が来たからにはもう心配はいらない』


詳しくはわからなかったけど、助かったと心底思った。


『何コソコソやってんだー?』


そんな俺たちに高木さんが声を掛ける。


苦笑いしつつ、もう聖人に任せるしかない。


『高木さん!コイツ、母親が体調崩したらしくて早く帰らなきゃ行けないんすよ!』


だから帰らしてやってもいいですか?代わりに俺が付き合うんで!


なんて根も葉もないことをさらりと言った。


『………』


大丈夫かと一瞬不安になったが、


『何だよ、それなら早く言えよなー!大変じゃねぇか!』


と高木さんは言って、簡単に俺を帰してくれた。


『ありがとうございます!すいません!』


と言って店を出る間際、聖人が俺に耳打ちして来た。


『高木さんは感動系に弱いんだよ!』


そう言った聖人に感心した。


『さんきゅ!今度奢る!』


それだけ言って、俺は走った。


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