君がいるだけで…[番外編短編集]
そんな俺にまた不貞腐れたような声が聞こえた。


「た、食べたくないならいいよ!食べなくて!」


そう言ってケーキを下げようとした美月の手を、掴んで止めた。


『違う。まさか美月がチョコレートケーキなんて作ってくれると思わなかったから驚いてんだよ』


「ど、どうせキャラじゃないわよ。しかもそれチョコレートケーキじゃなくてザッハトルテだし。」


なんて俺にはどうでもいいような説明もしてくれた。


俺にはチョコレートケーキとザッハトルテの違いがわからない。


というか、キャラじゃないかとは自覚してるんだな。


『何で手作りしようと思ったの』


不思議に思って聞いてみれば、小さくだけどちゃんと聞こえるように答えた美月。


「雅也が雑誌見てて作って欲しいのかと思って…」


『え?俺が?』


見てた覚えが全くない。


「み、見てたじゃん…!」


さう言って指を指したのは俺が買っているファッション雑誌。


『美月、多分それたまたま開いてただけだろ。俺バレンタインって気付いたの昨日だし。』


それを聞いた瞬間美月は声を上げた。


「な、何それ!紛らわしい!」


『でも、嬉しいよ』


素直にそう言えば、美月は照れていた。


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