君がいるだけで…[番外編短編集]
「こんなもん?」


「うん、オッケー」


買う材料のメモを見て確認すれば、ちゃんと全部揃っていた。


後は作るだけ。


にしても30人分かぁ。


大変だな…なんて思いながら、さっき目を止めていた物が気になった。


真里に言おうか、後で買いに来ようか迷っていたら、真里が突然言葉を発した。


「そういえばさ、美鈴。」


「ん…?」


「慎吾には何かしなくていいの?」


「………っ!」


鋭い、真里ってば。


サッカー部では特に恋愛禁止というのはないけれど、恥ずかしいのと皆に気を使われたくないのとで、

隠してるわけではないけどあえて公表はしていない。


だけど、真里には隠したくなかったのもあるけれど、まず真里に隠し事は出来ないので自分から言ってある。


「まさかこれで済まそうなんて思ってないよね?」


そう言ってレジ袋を軽く持ち上げた。


「まさかっ!」


そんなの絶対慎吾拗ねるし。


でも真里がその話をしてくれて良かった。


「真里っ、ちょっとここで待っててもらってもいい!?」


その言葉で理解をしたのか、ニヤリと笑ったけれど何も言わず、私に一言だけで返した。


「いいわよ。」


「ありがとっ!すぐ戻るっ」


私はまた賑やかな中に戻って、先ほど目を止めていた物へ一直線に向かった。


「まだあった…」


中々の人気らしく、それはどんどん売れていた。


一つ手に取って慎吾の喜ぶ顔を想像すれば、私の顔まで緩んだのが確認しなくてもわかった。


まさか慎吾を想って本命チョコを買う時が来るなんて、想像もしていなかった。


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