君がいるだけで…[番外編短編集]
そこでまた歩き出したけど、すぐに今度は真里が歩きを止めた。


「王子様のお出ましよー」


「………?」


一瞬何のことかわからなかったけど、顔を上げるとすぐにわかった。


もう帰ったはずの慎吾が、正門に寄り掛かって立っていた。


「慎吾っ!?」


びっくりしている私に、真里が声を掛けながらスタスタと歩いて行く。


「また明日、詳しく話聞かせてね~!」


「ま、真里!」


私の声を無視して、正門を出て行った。


この場にいるのは、私と慎吾だけになった。


何か、気まずい…?


でもバレンタインに気まずさは感じたくない。


「慎吾、どうしてここにいるの!?」


だから思い切って慎吾に駆け寄った。


『待ってた。』


その言葉に瞬きを数回していたけど、慎吾の頬っぺたと鼻が赤くなってることに気がついて、思わず慎吾の頬っぺたに手を当てていた。


「ごめんね、寒かったでしょ!?」


2月と言えど、寒さはまだ残っている。


「マフラー…、…手袋はっ?!」


そんなことを慌てて聞けば、ガシッと両手首を慎吾に捕まれた。


「慎吾………?」


『あったけーなー。』


そんな慎吾の返答にはまた瞬きをする。


どうしたんだろう、この人。


どうすればいいんだろうと考えていたら、片方の手首は離されて、片方は手首からするりと下に降りてそのまま手を握られた。


『帰ろうぜ』


「う、うん…?」


何かあったのかなとも思ったけど、いつもの慎吾に戻っていたのであえて聞くのをやめた。


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