君がいるだけで…[番外編短編集]
二人手を繋いで歩く。


いつもはペラペラ喋っている慎吾が、今日は無言だ。


「慎吾、何か怒ってんの?」


いてもたってもいられなくなって、率直に聞いてみる。


『怒ってる…訳では、ない。』


「じゃあ何?」


『何って、今日はバレンタインだぞ!?』


慎吾の言葉にさっきから目が点になってばかりだ。


何が言いたいのかさっぱりわからない。
バレンタインなのはもちろん知ってる。


大体、知ってなかったら部員にチョコを配ったりしない。


「全然わかんない…」


『俺は、部員と一緒なのか?』


その言葉に、意味を理解した。


「(あぁ、そういうことか)」


『しかも、美鈴の手作りを皆にあげちゃうしさ。』


真里との共同作業だし。
あんなの、凝ったものでも何でもないじゃん。

とは思ったけど口にはしなかった。


そして思い出した。

真里に部員と一緒にしていいの?って聞かれた時、"それは慎吾が絶対拗ねる"と思ったことを。


ほんとに慎吾は、素直だ。


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