君がいるだけで…[番外編短編集]
「ぷっ」


思わず笑ってしまった。


『何だよ…』


不貞腐れている慎吾を見て、益々私の顔は緩むばかりだ。


「なーんだ。そんなこと!?」


『そ、そんなことって!これは一大事だっ!』


男にとってバレンタインはロマンだ!なんて最後の方は呟いていた。


あえて今は渡さず、手を引っ張って歩くのを再開させた。


『大体な、美鈴の手作りなんて…奴らにはもったいない!』


まだ言ってる。しつこいなぁ、こいつ。


大体ねぇ、私だって言いたいことあるんだから!


「慎吾だって、色々貰ってんじゃん!」


知ってるんだから、鞄に入ってること。


『これはただの義理チョコだろ!?』


「私だって、部員にあげたの義理チョコだもん!」


もはや何の争いをしているのかわからなくなってきた。


慎吾がモテることは知っていたけど、チョコを受け取ったこと少しだけショックを受けたのは事実だけど。


しょうがないってわかってたから何も言わなかったのに。


「………」


また、気まずくなってしまった。


『悪い、お前とこうなりたいわけじゃないのに。』


慎吾はすぐに謝って、髪をクシャッとした。


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