英国喜劇リトレイス
頬に熱い衝撃が走った。
俺はエルヴィスの数メートル手前で立ち止まった。
震える手で左頬に手を伸ばす。
血は出ていない。
じゃあ、何が……
「あーあ。顔は最後まで守るもんだぜ。なぁ?」
熱い。
頬は火傷をしたような傷が出来ていた。
驚愕に染まった目でエルヴィスを見ると、奴の右手には──趣味なのか、確実にオーダーメイドだなとふと思った──硝煙をあげる真っ白い拳銃が握られていた。
「っ、てめ! ずるいぞ! 騎士なら剣で戦えよ!」
「その剣相手に普通ので戦えってな? レイモンドじゃあるまいし、それこそ卑怯って言うんだぜ」
「何ぃ!?」
「ディゼル、挑発だって」
わかってらぁ、とイアンの指摘もはねつけ、俺はまた走る。
エルヴィスは、小さくため息をついた。
「わかってないな──」