英国喜劇リトレイス
「夢?」
「……ああ。深い霧の中にでっかい時計があって、俺はその目の前に立ってる」
「それで?」
「俺は何もしない。けど、時計が少しずつ進んでいくんだ」
「お前それって……」
それからイアンは黙り込んだ。
何を考えたか想像はつく。
俺も考えた内容だ。
――命のカウントダウン
「今、重く考えても仕方ないさ。他にセルマはなんか言ってたか?」
「いいや」
「だったら、このまま行くしかねーよ」
「……そうか」
だから、今はゆっくり休んで行こうぜ。
寝具に潜り込んで、今日は夢を見られずにすみそうだ。