英国喜劇リトレイス
「うるさい! 誰だお前、下りてこいよ!」
霧が濃くて顔が全く見えない。
薄暗いのも手伝って、俺はイライラと壁を殴った。
「……あと少し、楽しみにしてるよ」
そして、例の笑い声を上げて誰かは消えた。
同時に、歯車の回る音がし始める。
「待て! おいっ、進むな……進むなよォッ!!」
俺は時計の文字盤をよじ登り、針に飛び付いた。
だが、止まらない。
動く針に堪えられず、俺は下に、立っていたところよりも下に落ちていった。
――――!!
目が覚めた。
「ハァ……ハァ…」
何だよ!
訳わかんねぇ!
明日は、力を使わないなんてことはあり得ないのに!
頬を流れる汗を拭う。
と、首筋に手がいった。
確実に、さらにはっきりと模様が浮かんだはずだ。
この日はもう、眠れそうになかった。