英国喜劇リトレイス
「―ってちょっと待てよ!!」
「?」
イアンのやけに慌てた様子に俺は足を止めて振り返る。
「ディゼル、今“ほとんど城から出たことがない”って言わなかったかっ!?」
「あ、うん」
「ええ!?」
イアンの顔に“信じられない”と“こいつに任せて大丈夫か?”とある。
なんだなんだ信用ないな。
「大丈夫だよ。行き先はわかってんだから」
「どこ?」
イアンは恐ろしい形相で俺に迫る。
怖いっておい!
「屋敷から一番近い森」
「に、何しに!?」
たじたじになりつつ俺は声を絞り出す。