桜が降る場所 (完)
「わかった」
それなら、しょうがない。
こっちに振り向かせるだけのこと。
「……ごめん。一人で帰るから」
川嶋が踵を返す。
俺は川嶋の腕を掴んだ。
そして、あと数センチ、というところまで、川嶋の顔に自分の顔を近づける。
「俺、川嶋のこと、諦める気ないから」
「!?」
大きく見開かれた川嶋の目。
「だから、俺を好きになれ。本庄のことなんて忘れさせるし」
「な…っ!」
なんて、強がりだけど。
本庄は男から見ても完璧だし、憧れる。
正直、勝てる気はしない。
……今は。
でも、俺は川嶋を諦めない。
絶対に振り向かせてやる。
そう強く思った時、風がザッと吹いた。
「「!」」
桜の花びらが俺たちの周りを舞う。
俺と川嶋は桜の木に顔を向けた。