桜が降る場所 (完)
――――…
季節は過ぎて、10月。
「川嶋」
「!」
私の心臓は飛び上がりそうになる。
好きな人の声が急に聞こえてきたら、誰でもそうなると思う。
ドキドキがバレないように必死にその気持ちを隠して、声の主に顔を向ける。
「何?高野」
私は笑顔で答える。
「本庄が呼んでる」
ちょっとムスッとしたような表情の高野。
私は少し笑いそうになった。
まだ私が先生のこと好きだって思ってるのかな…なんて。
もう、とっくに気持ちは…高野にあるのに。
「ありがと!行ってくる!」
明るく答える。
「うん」
ぷ。
ぶっきらぼうだなぁ。
「あっ、高野。今日、放課後時間ある?」
「え、あるけど?」
「委員会あるってさー」
「あ、そう」
「忘れないでね!」
最初はめんどくさいだけの委員会だったけど、今は高野と一緒にいれる時間が増えるから、委員会があるのが嬉しい。
私は軽い足取りで、先生の元に向かった。