桜が降る場所 (完)
「待って、頭ついていってない…。今の…マジ?冗談じゃなく?」
「……こんなこと、冗談で言うわけないじゃん」
高野は口元に拳を当てて、私のことをじっと見ていた。
「―――…やべぇ」
「―――何が…?」
今さらそんなこと言われても…って?
やっぱり遅かったのかな…。
高野は桜の花を見上げる。
「――…桜の花に願いをかけてた。川嶋が俺の方を振り向くように、って。すげぇ。叶ったし」
高野の嬉しそうな笑顔が私の方を向く。
私はその表情に涙が出そうになる。
困ったような顔じゃない…。
それって…都合良く考えてもいいの?
でも、それならあの子は…?
「昼…見た。かわいい子といるとこ」
「え?あーあれ、彼女」
「―――!」
彼女…やっぱりいるんじゃん…!
てっぺんからドン底に落とされるって、このことかもしれない…。
私の表情を読み取ったのか、高野はくすくすと笑って言う。
「兄貴、のな」
「お、お兄さん…?」
「うん、兄貴の彼女。」
そ、そうだったの…?
私はへなへなと、桜の木に寄り掛かる。