桜が降る場所 (完)
 

――下駄箱を出たところで、俺は川嶋に話し掛けた。


「川嶋。ちょいこっち。帰る前に付き合って」


校門とは逆方向を指差す。


それは桜の木のある方向。


「……何で?帰らないの?」


川嶋の顔から一瞬笑顔が消えたのを見逃さなかった。


俺はにっこりと笑う。


「ちょっとだけでいいからさ。な?」


「――わかった。じゃあ、ちょっとだけね?早く帰りたいもんっ」


川嶋にいつもの明るい笑顔が戻った。


……ように見えた。

 
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