桜が降る場所 (完)
 

――川嶋を連れてきた場所は、桜の木の下。


満開は過ぎて、ちょうど桜の花びらが散る季節。


「キレーだよな、桜」


そう俺は言うけど、川嶋からは反応がない。


川嶋の方を見ると…川嶋の表情は曇って見えた。


桜の木を見ようとしない。


「高野…私、やっぱ先に帰…」


川嶋は俺に笑いかけているけど、無理矢理笑顔を作っているのがわかる。


こんな顔させたくて、ここに連れてきたわけじゃない。


「俺さ、好きなやついるんだよね」


「へ!?」


すっとんきょうな川嶋の声に、笑いそうになる。


まぁ、そりゃそうか。


唐突すぎるもんな。


「驚くのはまだ早いし」


「?」


川嶋は状況が掴めない、という表情だ。


俺は川嶋に真っ直ぐ、向かい合った。

 
< 8 / 33 >

この作品をシェア

pagetop