桜が降る場所 (完)
――川嶋を連れてきた場所は、桜の木の下。
満開は過ぎて、ちょうど桜の花びらが散る季節。
「キレーだよな、桜」
そう俺は言うけど、川嶋からは反応がない。
川嶋の方を見ると…川嶋の表情は曇って見えた。
桜の木を見ようとしない。
「高野…私、やっぱ先に帰…」
川嶋は俺に笑いかけているけど、無理矢理笑顔を作っているのがわかる。
こんな顔させたくて、ここに連れてきたわけじゃない。
「俺さ、好きなやついるんだよね」
「へ!?」
すっとんきょうな川嶋の声に、笑いそうになる。
まぁ、そりゃそうか。
唐突すぎるもんな。
「驚くのはまだ早いし」
「?」
川嶋は状況が掴めない、という表情だ。
俺は川嶋に真っ直ぐ、向かい合った。