「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
その光景を見ていて可笑しくて、理絵が笑いながら蒲団から出て起き上がろうとした時

「痛い・・・めちゃ痛い・・・」

理絵も筋肉痛に襲われた。

人ごとではない、お尻や足の筋肉が、ひどく痛い。

どうにか立ち上がったものの、この痛さでは、今度は歩くことも、しゃがむことも容易ではない。

理絵の、その光景を見て、今度は由紀が可笑しくて、笑いながら

「うふふ・・・人のこと言えないよね」

と言いつつ、どうにか立ち上がり、歩こうとして

「痛い、痛い、痛い・・・」

それを見ていた理絵が、また吹き出して、二人一緒に笑った。

笑いながらも身体中が痛くて、二人とも、全く身体がままならない。

痛さに耐えながらも、トイレを済ませ、朝食を食堂へ食べに行って座ろうとした。

その時、痛い痛いと言いながら、座る時の顔の形相が凄かったのか、それとも声に驚き心配したのか、隣の席で食事をしていた年配の女性に

「大丈夫ですか」と声を掛けられた。

彼女はツアーのバスで来ているそうで

「確かに、この山の深さだと、歩き遍路の人にはきつくて、筋肉痛も起こりますよね」
と二人の説明に納得していた。

食事を終え、洗濯物をバッグに入れ、出発する用意を済ませて、出る前に、もう一度トイレへゆくのに、二人には大きな勇気が必要だった。

鬱蒼とした杉の大木が繁る十二番を打ち終え、下り坂を下りながら、二人して
「痛い、痛い・・・」「痛い、痛い・・・」の合唱である。
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