「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
さすがに理絵も、金剛杖を頼りに歩き下る。

由紀の方を見ると、身体の動きが、ぎくしゃく、ぎくしゃく、と歩いていて、まるで錆び付いたロボットのようだった。

昨日は雨の後の山道で、悪戦苦闘して、今日は筋肉痛で苦行を強いられている。

十三番への道は、幾通りかあるが、二人は距離が長くても上り下りの最も少ない歩きやすい道を選んで進んでゆく。

幸い天気は良く、出発前に見た週間天気予報では、三日間くらい晴れマークが続いていた。

昨日や一昨日のように天気を気にする必要は無いのだが、如何せん身体が思い通りにはならない。

理絵は杖を頼りに、由紀はロボットの如く歩いて行く。

谷まで下りてきて一休みをし、川沿いの道を少し行っては一休みをしながら、進んでいくうちに昼前となり、食事をする為に店に入った。

ところが食事が済んでも、二人は、なかなか立ち上がろうとしない。

一度腰掛けると立ち上がるのが、おっくうでしょうがないのだ。

地図で、今夜の宿泊予定の宿までの距離を測ると、まだ半分も来てはなさそうである。

「そろそろ出発しないと、しょうがないね」

と由紀が言って
「よいしょ」

と言いながら杖を頼りに立ち上がるのを、理絵が見ていて

「よいしょ。言うようになったら、お婆さんやね」

と言いながら、自分も立ち上がる時に

「よいしょ」

と無意識に言ってしまい、笑ってしまった。

川沿いの道を休み休みしながら歩いてゆく。

由紀が筋肉痛で無い方の手で、杖を突きながら歩くのだが、利き手と反対の手になり、やや不自由そうである。
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