「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
李は席に残り、一人うつむいていた。

どうにかして、この難局を乗り越えなければならない。

李の眉間に、しわがより、困苦を極めた表情になっていた。




「ありがとう」

宿の人に、お礼を言い、支払いを済ませた由紀と理絵が、宿の玄関を出た。

由紀は筋肉痛が昨日よりもひどくなっている感じがして、歩くのも一段と苦しそうである。

歳を取ると、一日目よりも二日目のほうが筋肉痛がひどくなる。

理絵の方はといえば、多少筋肉痛は残っているものの、ずいぶん楽になったようで、わりとスムーズに歩いている。

若さである。

理絵が由紀に体調は大丈夫かと訊くと

「大丈夫じゃないわよ。大変よ。どうにかしてほしいわ、この身体」

と言いながら、ぎくしゃく、ぎくしゃく、と歩いている。

理絵は由紀に合わせて、ゆっくりと歩く。

昨日からずっと、鮎喰川という名の川沿いを進んでいく。

「そういえば、この川、お婆ちゃんたちから聞いた川じゃないけど、蛍、飛ぶかなぁ」

「お婆ちゃんたちの言っていた川の近くだし、ずっと、ここまで山の中だったし、きっと飛ぶよね。言っていた川ほど、たくさんじゃなくても、少しは飛ぶよね」
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