「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
理絵は由紀に語りかけるのだが、由紀は話を聞いている余裕などある筈も無く、とにかく歩くだけで精一杯であり、答える余裕などない。

それでも理絵が
「ねえ、飛ぶよね」
と、また訊くので

「たぶんね」
と、そっけなく答えた。

少し歩いては休息をとり、また少し進んでは休みながら、三時間以上掛かって十三番大日寺に、たどりついた。

ここまで来ると、歩く周囲の景色も開けてきて、山から里へ下りてきたのだなあ、といった感じである。

お参りをして十四番へ向かう途中で、昼になったので、食事にしようと、お店に入り定食を食べた。食事の後、今夜泊まる宿を予約して、三十分は休息したので、理絵が

「そろそろ、行こうか」
と言うと

「え~、もう行くの。もう少し休もうよ」

と由紀が言うので、理絵は

「そんな事、言っていると、どんどん遅くなるよ」
と言った。

すると由紀が
「鬼みたいなことを言うわねぇ・・・行くわよ。行けばいいのでしょう」

冗談のようにではあるが、ぶちぶちと言いながらも立ち上がろうとする。

理絵も立ち上がると

「そうよ、どうせ私は鬼です。何と言おうが、もう行くよ」

と店から出て行こうとする。

後ろから、食事代を払った由紀が

「ちょっと待って」

と言いながら、追いかけてゆくが、ロボットのような歩き方では追いつくわけがない。
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