「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
結局、理絵が由紀が追いつくのを待ち、由紀の歩調に合わせて、また歩きだした。

普通であれば、一時間も掛からない道のりを、二時間近く掛けて、ようやく十四番常楽寺に着いた。

常楽寺に入ろうと石段をのぼると、岩がむき出しになっていて歩き辛い。

二人は、岩を削ってきれいな石段にして、歩きやすくすれば良いのにと話しながら、境内に入った。

すると岩が一面に広がっている。ごつごつとしていて、表面は一定の方向に削られたような模様になっている。

それまでの寺の景色と異なり、ちょっと異様な風景である。

二人は岩の上を歩いてゆくが、非常に歩き辛い。特に由紀は、ただでさえバランス良く歩けずに転びそうになる。

「ずいぶん岩だらけだね。どうしてこんな所に、お寺を建てたのかなあ」

などと話しながら進んでいくと、岩についての説明書きがあり、それによると岩の名を流水岩と記述してある。

なるほど、そう言われてみると、岩の模様が水によって浸食を受けて削られた跡のようにも見える。

十四番から十五番国分寺までは近くて、由紀の足でも二十分も掛からなかった。

ここまでのお寺には見られなかった、スケールの大きな庭園がある十五番を打ち、今夜の宿に入った。

「今日も、くたびれた・・・ほんと、つかれたわ・・・」

由紀は、やれやれ、やっと着いたという感じである。
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