「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
二人連れも、理絵の言葉に、にこにこ笑みを浮かばせて

「あなたは、まだ若いから見ないほうがいいかな。私らは、もう歳だし、いつまで命があるか分からないし、見てくるわね」

と理絵に言い残し、中へ入ってゆく。

由紀が、まず外に出てきて

「自分の姿が見えて良かった」

と言っている後から、二人連れも出てきて

「私も、どうにか見えたわ。見えなかったら、どうしようかと思った」

と言うのを理絵が聞いて

「よかったね」と喜んだ。

二人連れは夫婦で、七十歳を越えた記念に、歩き遍路にトライしたのだと話して、今日は十八番恩山寺まで行き、その近くに親戚が居るので一日か二日泊まって休息をとってから、二十三番薬王寺まで歩くのだと言う。

一気に八十八ヶ所を歩くのは大変だろうと、今回は徳島一ヶ国巡りをするらしい。

老夫婦は、今からお参りをするのだと、本堂へ向かって歩いて行った。

由紀たちは、十七番を打ち終え十八番に向かって出発した。

結局、理絵は井戸の中を覗かなかった。

少し進むと分かれ道に差し掛かった。

地図で確認すると、まっすぐ進むと徳島市内に入り、眉山公園の周りを、ぐるりと回る道になっていて、平坦ではあるが距離がありそうである。

右へ進むと丘を越えて行く道になっているのだが、距離は短そうである。

どちらの道を行くか二人で相談したが、由紀が筋肉痛も、もうずいぶん増しになったので距離の短い方へ行こうかということになり、右の道を行った。
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