「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
増しになったとはいえ、下半身には、まだ張りがあり、上り坂を歩くと徐々に速度が落ちてきて、息も荒くなってくる。

下り坂になったところで少し休んで歩き出すと、先ほど十七番の井戸の所で会話をした老夫婦が追いついてきて

「どうしたの、少し歩くのが辛そうね」

と声を掛けてきたので、由紀が昨日まで筋肉痛で苦しみ、今もまだ少々筋肉には張りがあるのだと話した。すると老夫婦は

「私らは、愛媛のみかん農家で、段々畑を上がったり下ったり、毎日のようにしているから筋肉痛なんてなったことが無いわ」

と言うので由紀が、今も現役で農作業をしているのかと訊くと

「今は、息子夫婦がしているけど、私らも、ほとんど毎日手伝うよ」

と言って由紀たちを追い越して行き去った。

由紀の速度に合わせて歩いていた理絵が

「お母さん、お年寄りに抜かれてしまったわね」

と言うので、由紀は

「筋肉痛さえ無ければ負けないのに」

と悔しがっていたのだが、理絵に

「だいぶん回復しているのにね。それに筋肉痛が、なかなか治らないというのも、考えてみれば実力の差じゃない」

と言われて、少々情けなくなった。

夕方、昼間に予約をしておいた、十八番までは、あと一時間くらいの所にある宿に着き、食事と入浴を済ませて、部屋のテレビのスイッチをいれてニュースを見た。

すると小惑星群を破壊する為の核ミサイルを、発射すると言っている。

発射の決定発表は十数時間前にあって、まもなく発射されるのだと言っている。
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