「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
宿に入り、宿泊の手続きをしている時に、宿の人が、もう少しすると、この辺り一帯の浜で海亀の産卵が始まるのだと教えてくれた。

宿の近くの田井ノ浜にも上陸してくるらしいが、一番多く上陸してくるのは、日和佐の大浜海岸だという。

二人は海亀なんて水族館でしか見たことがないので、一度、自然の海亀を見てみたいとも思ったが、理絵は、産卵している時に見るのは、海亀さんの邪魔になるよと話していた。

部屋で蒲団を敷いて、明日の用意をしながら、理絵が

「多美恵さんたち、辛かったでしょうね」・・・

ポツリと言った。

しばらくの間、沈黙が流れ・・・二人は黙ったまま用意をしていた。

二人には多美恵さんたちの内面が痛いほどよく分かるのと同時に、宏のことを思い出し、直や勇太のことを考えていた。

ついたままのテレビでは、今夜も小惑星群のニュースばかりが流れている・・・


翌朝、宿を出て、海岸沿いを歩いて二十三番へ向かっている。

「この辺りの浜ね。海亀が上陸して産卵しに来るのは」

そう言いつつ、二人は浜の方を見ながら歩いた。

由紀は筋肉に張りが残っているものの、ここまで全体として進むのが遅れているので、少しでも遅れを取り戻そうと、一生懸命に歩く。

阿波の結願寺、二十三番薬王寺に着くと、たくさんの人がお参りに来ている。厄除けの寺として有名で、厄落としに来ている人々が大勢、居るのだ。

厄坂の石段に一円玉を置いて、厄を落としながら上る。
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