「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
李は、疲れていて、今のは見間違いか、幻でも見たのかと思いながら、ビルの中へと戻っていく。

戻る途中、以前見た親子の三人連れや家族のことが頭に浮かんできた。

ビルの中に入った李の背中の向こうには、遠くに親子三人の姿があった。




夕方、宿に着いた由紀と理絵は部屋に入ると早々にニュースを見たが、小惑星群の破壊はモニターの不調の為に、確認が遅れていると報道していた。

テレビのキャスターや解説者は淡々と話をしていて、公式の会見発表が日本時間の午後十一時からあるので、詳しい特集を十時四十五分から放送しますと言っている。

報道関係は政府からの要請を受けていて、国民が不安になるような報道は一切せずに、十一時からの公式発表を待つようにのみ放送している。

二人は昨日以上に長い距離を歩き、疲れていた。特に由紀は相当に疲れている様子で
「できれば少し横になりたい」と言っている。

いったん横になると、そのまま眠りに入ってしまいそうなので、先に入浴と食事を済まそうと理絵が言い、風呂へ行く用意をしていると由紀の携帯電話の着信音が鳴った。

由紀が、お婆ちゃんたちからにしては、掛かってくる時間が早すぎるなぁと相手先を見ると、科学技術省からであった。

なぜ、今頃掛かってきたのだろうと思いながら電話を取り

「直のことで何か分かったのですか」
と問うと

確かに用件は、直の件についてではあったが、直の消息とか何か手掛かりがあったという話ではなかった。

用件は、直が消息を絶って三ヶ月以上が過ぎたので、そろそろ結論を出さないと、いけない時期にきているとのだという。
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