「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
由紀は、何故今頃になって突然に連絡してきたのかと問うと、本来は三ヶ月を過ぎた時点で連絡を取ろうと思ったのであるが、ここのところ、小惑星群の事で忙しくて連絡をする時間が取れなくて遅れたのだと言った。

結論を出さないといけないと言った意味が何を指すのか、由紀には分かったが、苦しい決断であり、受け入れ難い。

ここまで直の無事を信じて、がんばってきたのに・・・

由紀の顔色が変わっていくのが、理絵は見ていて分かった。

科学技術省の担当者は、一連の小惑星群の問題が片付けば、また連絡をしますと言って電話を切った。

直たちエウロパ・ステーションの搭乗員は、現在も消息不明のままであり、科学技術省の人は、三ヶ月以上も連絡の取れない状況であり、もう生存の望みは無いであろうと考え、ただ事務的に連絡を入れてきたのである。

由紀の顔色が悪くなり、沈痛な表情となった。

理絵も隣で由紀の様子を見ていて、何を話しているのかを察知して気持ちが落ち込む。それでも確認のためにと由紀に、どんな内容の電話だったのかを訊ねた。

その時、由紀の顔を見ると、目から涙がこぼれそうになっているのが分かった。

そして涙が溢れて流れ落ち出すと、泣きながら理絵に、電話の内容を話しだした。

聞いているうちに、理絵は、どんどん悲しくなってきて、涙に沈む。

二人が、悲しみに打ちひしがれているところへ宿の人が

「食事の用意ができているので、いつでも来て下さい」

と言いにやってきて、二人の泣き崩れている様子を見て

「どうか、なされたのですか・・・大丈夫ですか」

と声を掛けてくれたのだが、由紀は涙を拭きながら、声を絞り出して

「ありがとう、ございます。すぐに食べに行きます」
とだけ返答した。
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