「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
由紀は理絵を起そうかと思って、隣で寝ている理絵を見たが、自分自身の起きる気力が無く、そのままじっとしていた。

二人とも、昨夜、科学技術省から掛かってきた電話の内容のショックが大きくて、いつまでも眠れずに、眠りにつけたのは、明け方近くになってからだった。

由紀は何を考えるでもなく、ただ茫然と天井を見ていた。

しばらくして首を横に向けて、寝ている理絵を見てみると、由紀と同じ様に仰向けに寝たまま目を開けて、天井を見つめたまま、じっとしている。

「目が覚めたの」

と由紀が理絵に話しかけると、理絵は

「うん」
とだけ答えた。

その後、二人は黙ったまま、時間が流れてゆく。

ややあって、由紀が

「そろそろ起きようか」

と声を掛けた時には、もう七時前になっていて、二人は着替えて朝食を食べに行った。

理絵は、がんばって半分くらいは食べたのだが、由紀は相変わらず、ほとんど手をつけずに、御飯と漬物を少し食べ、味噌汁を啜ったくらいであった。昨夜、宿の人が握ってくれた、お結びも全然食べなかったし、心配であり、理絵は

「もう少し食べないと、今日、歩けないよ」

と言ったが、だめである。

結局、宿の人が心配して、今朝も、お結びとおかずを包んでくれた。

出発しようと用意をしながら理絵が

「お母さん、今日は歩くのやめようか。一日休んで出発を明日にしようか」

と言ったが、由紀は

「少しでも進もうよ」

と言うので、今日は二十四番最御崎時まで歩いてゆき、寺の宿坊で泊まることに決めた。
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