「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
そこまでなら、どんなに、ゆっくり歩いても四時間も掛からずに行き着くことができるので、無理をしないで済むであろうと、二人で決めた。

宿の人に礼を言い、玄関を出ようとすると、宿の人が二人を呼び止めて

「念のために、お訊ねしますが、小惑星群のニュースを見ておられますか」

と二人は訊ねかけられた。由紀が

「テレビは、全くみていません」

と答えると、宿の人は

「ニューヨーク時間午後七時発表の情報を、十分ほど前にテレビで放送していたのですが、小惑星群が今の速度で飛来してくると、日本時間の今日の午後三時過ぎに到達するそうです」

「ただ小惑星群の速度がどんどん落ちていてこのまま減速を続けると、実際に到達する時間は、もう少し先の夕方、五時以降になるだろうと言うことです。地球上空で破壊するそうで、午後三時からは外出を控えなくてはいけないと放送していましたよ」

と言い、続けて

「ですから今夜、宿泊する予定の宿には遅くとも、午後三時までに着くか、もしも、それが無理なようでしたら、もう一日、当方の宿で、お泊りしていただいてもよろしいのですが」

と言ってくれたのだが、二人は、今日は二十四番までしか行きませんから、大丈夫ですと返事した。

宿の人も、それだったら近いので安心ですと言ってくれ、二人は出発した。

二人が歩き始めた時には、もう九時近くになっていた。

天気は雲ひとつ無く快晴であるが、二人の心は暗闇であった。
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