「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
しばらく歩くと汗を掻いて来て

「今日は朝から暑いねえ、お母さん」

と理絵が話しかけるが、由紀は

「そうねぇ」

とだけ答えて、ゆっくりと歩いてゆく。

一番を発った日と同じ様に暑い一日となりそうである。

二人は昨日までとは、うってかわって口数も少なく、ややうつむき加減に歩いて行く。

昼過ぎには二十四番に着き、お参りを済ませて宿坊に行くと、宿の人が、本来は宿泊のお客様が入れるのは午後三時以降なのですが、今日は小惑星群が接近しているという特別の事情があるので何時からでも入れますと言って、上がらせてくれた。

部屋に入ると、理絵は少々お腹が空いてきたので、朝、宿を出る時に頂いた、おにぎりが入っている包みを出して

「お母さん、半分ずつ食べようよ」

と言って、包みを開けた。

しかし由紀は、おにぎりを一個食べただけで、もういらないと言うので、残りは理絵が食べた。

テレビを見ていると、小惑星群は午後六時前に、地球に到達するだろうと言って、政府の大臣が出てきて、午後四時以降は外出しないように呼びかけている。

移動中の車も、特別な用事のある車以外は走行を禁止して、自宅へ戻るか、駐車場に止めて待機するように求めている。午後十一時以降に外出しても良いかどうかの決定を行なうので、少なくとも、それまでは外出を禁止するように言っている。

見ているうちに、由紀は、しんどくなってきて横になった。

一昨日、昨日と長い距離を歩いて疲れている上に、ほとんど食事らしい食事をしていない。

おまけに、ろくに眠れてもいないし、科学技術省からの連絡後は心身ともに疲労しきっていた。
< 176 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop