「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
建物全体の収容人数は、報道陣や関係者も含めると十五万人以上となり、宇宙船の発射の瞬間が正面から見られるようになっている。

その建物から周囲五キロメートル以内の範囲に広大な駐車場があり、収容人員に合わせ、およそ十万台以上が駐車できるようになっている。

その広大な駐車場の各所と建物との間をシャトルバスが、ひっきりなしに往復して、観客を運んでいる。

シャトルバスは建物から二百メートルほど離れた所に、次々と到着して乗客を降ろしては、また、すぐに走り去ってゆく。

今日は久々の大イベントであり観客席は予約で埋まっていて、シャトルバスを降りて建物へ向かって歩く人の群れで、歩道の上は溢れかえっている。

運良く建物の近くの駐車場に車を置けた人は、シャトルバスが迎えに来るのを待ちきれなくて、直接、建物に向かって歩いて行く人も大勢いるが、その人たちの列も駐車場と建物の間に長々と続いている。

発射予定時刻は午前十一時四十五分であるが、朝早くから延々と混雑した状態のままである。

由紀と直、そして理絵の三人は発射の見学に招待されていた。

三人は死んだ宏の家族として、これまでも木星や土星の衛星に宇宙船を打ち上げる時などに度々特別招待されていたのだが、今まで一度も来たことが無い。

打ち上げの様子を見ると、宏のことを思い出して悲しくなるような気がして、そして何となく怖くて見に来ることができなかった。

今回、初めて招待状を持ち、見学に訪れたのだった。
それには訳があり、その訳は、直がエウロパの観測宇宙ステーションの一員に選ばれた事であった。
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