「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
「その他の全機能が停止した入植地は、小惑星群が通り過ぎるまで観測した後に発信しようとしたらしのですが、その前に、すべてが機能不全になってしまっていたということのようであります」

「ただし、何故、全機能停止したのかは何度も、お話しているように原因が判明しておりません」

話をしていた横から別の補佐官が来て

「総長、科学者の計算によると火星に保有している稼動可能な限られた車両台数では、全入植地の住民を救うのは不可能かもしれません。また受け入れる側の入植地の収容人数にも限りがあり、このままでは避難民、全員の救出は無理ではないかと思われます」

報告を受けた李は、すぐに補佐官を伴って科学者の所へ行き事実を確認したのだが、同様の返答であった。

その時、計算の応援に呼ばれて隣の席で作業をしていた科学者が言った。

「救援に向かう乗用車両に酸素タンクを積載してゆき、到着した入植地でタンクを降ろして開放しておいてから救出して帰る。そうすれば酸素濃度が上昇し、少しでも次の救出までの時間が稼げるのではないでしょうか」

「また本来は乗用でない運搬車両に酸素タンクを積み、機能不全の入植地のうち五ヶ所程度の中心部に位置する入植地に重点的にタンクを降ろして開放し、酸素濃度を上げて一時的な避難シェルターとして活用するというのはどうでしょうか」

複数の科学者が急ぎ計算をしてみると、確かに提案のあった作業を上手く組み合わせると、どうにか全員救えるかも知れない。

酸素タンクは各入植地とも非常用に、かなり蓄えがある筈であるから、それを取り崩して使用すればよい。

すぐに組み合わせと計算の作業に着手して、結果の出た所から火星へ指示をしてゆく。
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