「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
二人は声を揃えて

「ありがとう・・・元気でね。気をつけてね」

と言い、笑顔で手を振っている。

その二人の目には、嬉しくて涙が滲んでいた。

ほんとにありがとう・・・心で呟いた。


十番切幡寺の、お参りを済ませて十一番藤井寺へ向かって歩いてゆく。阿讃連山に別れを告げて南に向かう。

今日は天気が下り坂だと言っていたが、そのわりには青空も見えている。

歩く途中、吉野川に掛かっている欄干の無い橋を渡りながら理絵が

「気持ちいいね。風がとっても気持ちいい」

由紀も風を、とても心地よく感じていた。

橋の中央まで来て立ち止まり西を見ると、阿讃連山と四国山地が吉野川を挟むように北と南にパラレルに続いているのが見える。

東を見ると今、渡っている橋辺りを基点として吉野川の下流に向かってデルタが広がっているのが分かる。

橋の下を流れている吉野川は広々としていて、青い水が蕩蕩と流れている。

風は阿讃連山と四国山地の間を流れる吉野川の上を上流から吹いてくる。

吉野川の中州や両岸に竹林が広がっていて、その竹林が風で波を打っている。

その風景を見ていて由紀が以前にテレビで流れていたニュースを思い出し

「そういえば四国の竹が、東大寺二月堂のお水取りで使われている松明の竹に使用する為に送られているって言っていたわ。確か徳島の竹だって言っていたから、たぶんこの辺りのじゃない」
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