「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
とにかく、どうにかこうにか、理絵についていき休息所に、たどり着いた。

時間は、もう一時半を過ぎている。

「あ~しんど。もうだめ。もう動けない・・・だめしんどい」

言いながら由紀がベンチに、へたりこんだ。

理絵も由紀の隣に腰を下ろし、置いたバッグの中から出発前に、宿で渡してくれた弁当を二つ取り出して

「さあ、食べよ。お母さんの分、置くよ」

と言って由紀の前に弁当を置いた。

「これ、おいしいよ・・・けっこうおいしいよ」

と言いながら理絵は、さっそく食べ始めたのだが、由紀はボーッとしている。

食べていた理絵が
「早く食べてよ、お母さん」

「最初の休息所で休みすぎて、ずいぶん遅れているよ」

理絵が、せかすのも無理は無い。長い山道には所々簡単な造りの休息所があるのだが、ただでさえ歩くスピードが遅いのに、ここまで来る途中にあった休息所で由紀が疲れたと言うので長い時間の休みを取った。

はやく出発しないと本当に深い山の中に取り残されてしまいそうだ。

由紀も、お茶を飲み一息ついて弁当を食べ始めた。

「おいし・・・理絵が言うとおりだわ、これおいしいね」

と言いながら、食べ始めると、あっと言う間に食べてしまって、お茶を飲みながら

「一人では無理やね。一人では絶対に無理、到底来れない」

「途中の休息所で弁当や荷物も入れ替えて理絵が持ってくれたし、理絵が居るからここまでたどり着いたけど・・・一人では絶対に無理」

などと言いながらも出発する用意をしている。
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