「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
ただし、なかなか良い案ではあるが、どの程度の距離から発射すれば有効なのか分からない。

近い位置から発射できれば、それだけ正確であろうが、できるだけ遠い位置から発射しないと危険を伴う。

しかし他には適当な手段も考えられず、ただちに検討に入った。

小惑星群の進む方向と速度を計算して最初は百キロメートル離れた地点から、次に三百キロ、その次には六百キロとシミュレーションをしながら検討を重ねていく。

最後に一万キロ離れた位置からの探査機発射の検討を行なったが、小惑星群の速度が速いこともあり距離が離れれば離れるほど接近するのが難しくなる。

おまけに小惑星群が徐々に加速していて、計算が、より難しい。

小惑星群の軌道から八千キロ離れた地点からの発射だと、誤差はあるものの、およそ二十キロから四十キロの距離で映像を撮ることが可能であり、最終的に、その地点から発射する事となった。

小惑星群から離れても、四十キロ以内の画像であれば、小惑星群の全体像と表面の状態も、ある程度は解析できるであろう。

検討結果が出た後、ただちに地球を出発後に待機している調査船に指令が送られ、同時に帰還途中に待機していた調査船には、すぐに地球へ帰還するように命令した。

その時、地球へ帰還することになった調査船から、小惑星群へ探査機を発射する為に残る調査船に、任務の健闘を祈る通信があった。

通信を送ったのは、帰還する調査船の隊長である勇太であった。

勇太は地球帰還まで十日前の位置で小惑星群を観測せよとの指令を受け、地球から出発後八十日を経過していた調査船と連絡を取り合いながら位置取りをして、それらを待ち構えていたのだった。

勇太は観測の為に残る調査船を気遣いながらも、地球に向かっての帰還を開始した。

検討会議は終了し、李は通信本部に立ち寄った後、帰宅した。
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