佳き日に
「と、まぁこんな感じで、僕らメモリーズは警察に追われる立場にあるんです。」
「大変ですね。」
「僕らは警察に寝返った側なんです。だから追われることはないので楽なんですけどね。メモリーズは警察の他にもう一つ、大きな敵がいるんです。赤い女、と言って。二十年以上も前のことなので半分都市伝説みたいになっちゃってるんですけどね。」
「赤い女・・・?」
「赤いドレスに赤い靴を履いて、何十人ものメモリーズを殺していったんです。」
「え、え?」
嫌な予感がした。
車に押し込まれたときでさえ落ち着いていたというのに琥珀は今になって混乱していた。
だって、赤いドレスに赤い靴なんていったら、数週間前に琥珀がしていた格好そのものじゃないか。
さっき琥珀たちに突っ込んできた車。
パズルのように頭の中でピースがつながっていく。
「それって、もしかして、私が赤い女だって思われてます?」
恐る恐る琥珀は考えていたことを口に出す。
懇願するように閏を見つめて。
頼むから首を横に振って。
琥珀の願いに反して車内は嫌な沈黙に包まれた。
「まぁ、端的に言えばそうなりますね。」
閏が申し訳なさげにそう言う。
「やっぱり・・・。」
琥珀がそう呟けば琴が助手席から振り向いて、分かってたの?エスパー?などと言ってきた。
今はそれに言葉を返す精力が琥珀にはない。
はぁ、と重いため息をつけば閏が困った顔をする。