佳き日に
「成り行きはよく分かりませんが、巻き込んでしまってすみません。」
閏が謝ることじゃないのに謝ってきた。
苦労多そうだな、この人。
失礼にも琥珀はそんなことを思ってしまった。
「琥珀さんは今すべてのメモリーズに狙われていますから、一旦身を隠してほしいんです。」
「どこに?」
こんなに危険な状況に身を置くなんて、人生で初めてだ。
どうすれば助かるのか、知識も経験もない。
そうなると、琥珀に残された道は一つだった。
一緒に車に乗っているこの人達にすべてを任せる。
「この前、赤いドレスに着替えたときの場所だ。」
雪がそう言うと同時に、車は路地裏に入る。
雰囲気が一転。
「俺と琴と閏がいる限り、他のメモリーズはそう簡単には手を出してこないはずだ。だから、絶対一人で外を歩かないようにしろ。」
雪の言葉は命令口調のせいか、やけに威圧的に感じた。
初めて会ったときに感じた恐怖がじわじわと這い上がってくる。
「雪、怖すぎだし。」
「怯えさせてどうするんですか。」
少し嗜めるように琴と閏が言ったが、雪は已然しれっとしている。
「逃げられたら困るだろ。」
あぁ、どうして私はこんな人達と関わることになったのだろう、琥珀は心の中で嘆いた。
物事はすべて成り行き。
いつか見た映画の台詞、まさに、その通り。