佳き日に
小さな王様の小さな幸せ
[1]
相変わらず、生活感のない部屋だな。
二度目の訪問で琥珀はそう思った。
雪に連れてこられた場所は、前回と同じく暗い路地にある建物。
扉を開ければ中はなかなかきれいにされているが、生活館はない。
ベットに、机に、椅子と。
一通り揃っている家具をぐるっと見回してから、雪はこちらを向いた。
「今日から、ここに住んでもらう。」
「・・・はい。」
なんとなく予想はしていたし、仕方ないとは思うが気が乗らない。
いくら私の命が危険に脅かされているといっても、親に連絡も出来ないまま外泊なんて。
「親に連絡は、してもいいですか?」
少し腰が引けるものの、気になってそう尋ねればなんでもいい、と言われ、閏が携帯を差し出してきた。
少し拍子抜けしてしまう。
もっとこう、厳重な監視体勢の元、外との連絡も禁止、という雰囲気だったのに。
「だが、お前に俺ら以外のメモリーズと連絡をとられると困るから、携帯は壊させてもらった。」
「は・・・?」
フリーズした。
雪は今、何か、何かとても重大なことを言ったような。