佳き日に
「そんなに睨むなって。今回はこっちの過失だからお前の治療費払わなくちゃいけねーんだよ。」
「過失?」
エナカは眉をひそめる。
サングラスのこの男は一応、警察なのだ。
ただ、ちょっと普通の警察とは違い主な仕事はメモリーズを殺すこと。
名称はなんというのか分からないが、自分たちでは秘密警察と言っていた。
「やっぱ記憶飛んでんのか。お前、殴られたんだよ。」
「あっ。」
男の言葉から、エナカの頭はすごい勢いで回転した。
琥珀を助けようとしたら轢かれそうになって、頭に衝撃がきて。
怒濤の勢いでエナカは殴られる前のことを思い出していた。
「琥珀、どうなったの?無事なの?」
まず始めに気になったのは琥珀のことだった。
彼女はメモリーズに狙われていたはずだ。
守るつもりが、逆に危険に晒してしまったが。
「ん、あの女の子か。無事だよ。今俺らが保護してる。」
男の言葉にエナカはホッとひとつ安堵の息をつき。
「あの子を狙っていたメモリーズは、今どこにいるの?」
「あぁ、ちゃんと死んだよ。俺じゃないが、別の仲間がやってくれた。三十代くらいのメモリーズだったみたいだぜ、犯人。」
は、とエナカは一瞬固まった。
そんなエナカの様子を見て、男も一瞬不思議そうな顔をした。