佳き日に
エナカが言っていた琥珀を狙うメモリーズとは、わざとぶつかって携帯を落とさせた栗色の髪の青年や、ファミレスで琥珀の鞄に盗聴器を仕掛けたであろう二人の兄弟のことだ。
あの目つきが悪い栗色の髪の青年を三十代と言う人はいないだろう。
二人の兄弟にしても琥珀が「小さくてかわいい」と言うくらいなのだからかなり若いはずだ。
「栗色の髪の、目つきが悪いのと、二人の兄弟のメモリーズが琥珀を狙っていたはずだけど・・・」
エナカがそう言えば、男はなんだ、と顔をパッと輝かせた。
「あぁ、その栗色の奴は、俺ら側だ。」
「・・・え。」
「二人の兄弟の方は、その栗色の奴とそいつの仲間が殺してくれるはずだ。」
「え、え、ちょっと待って。」
ぐちゃぐちゃで頭の中が整理できていない状況で男の言葉に静止をかける。
宙に浮かせた手は殴られて倒れたときについたのか痣が見えた。
こんな傷、ついたのは久しぶりだ、とエナカは思った。
「えっと、つまり、あんたたち秘密警察はメモリーズと手を組んだの?」
「そうだ。」
あっさりと、なんでもないように男はそう言った。
「まぁ、三人だけだけどな。」
男はそう付け加えるとどこからかせんべいの袋を取り出しバリボリと食べ始めた。
「敵なのに?」
「敵だけど、かなり使える。つぅか、強えよあいつらは。」
全盛期のお前と俺でも敵わねぇかもな、などとのんきに男は言う。
エナカは何故そんなに悠長に構えられるのか、不思議でしょうがなかった。
そんなに強いんだったらもう完全に危険分子じゃないか。
裏切られた瞬間、人間側が殺られる。
早めに消しておくべきだろうに。