佳き日に
「不可侵っつうのか。とりあえずあの三人にはメモリーズを殺してくれればちゃんと報酬はやる。
俺らはあいつらを殺さないし、あいつらも俺らを殺さない。」
「裏切ってくる可能性もあるんじゃないの?」
「まぁ、あるだろうな。」
「じゃあ、なんで手を組んだりしたの?」
ゴホゴホと、せんべいが喉に詰まったのか男が咽せる。
サングラスが少しズレて、ちょっとだけ見えた目元には皺があった。
一緒に仕事をしていた時期は、この男は何年たっても変わらないだろうな、と思っていた。
実際、二十年近く経った今でもサングラスをかけ、場所も気にせずせんべいを食べるところは変わっていない。
でも、少し狭くなった肩幅とか、目元の皺とかが、存在を主張してくる。
変わらないものなんてないんだって。
何があったって、時は流れて、地球はいつも通り、回っていく。
「そんなの、使えるからに決まってるだろ。あいつら多分、今秘密警察に所属している中で一番働いているぞ。」
男の言葉にエナカは下を向く。
シーツをギュッと握り、唇を噛む。
考えてみれば当たり前だ。
元々身体能力の高いメモリーズと人間が同じ武器を持ったら、どう考えたってメモリーズの方が強い。
バリボリと音が聞こえる。
咽せたのにまだこりてないのか、男はまたせんべいを食べ始めている。