佳き日に




「不可侵っつうのか。とりあえずあの三人にはメモリーズを殺してくれればちゃんと報酬はやる。
俺らはあいつらを殺さないし、あいつらも俺らを殺さない。」

「裏切ってくる可能性もあるんじゃないの?」

「まぁ、あるだろうな。」

「じゃあ、なんで手を組んだりしたの?」

ゴホゴホと、せんべいが喉に詰まったのか男が咽せる。

サングラスが少しズレて、ちょっとだけ見えた目元には皺があった。

一緒に仕事をしていた時期は、この男は何年たっても変わらないだろうな、と思っていた。
実際、二十年近く経った今でもサングラスをかけ、場所も気にせずせんべいを食べるところは変わっていない。

でも、少し狭くなった肩幅とか、目元の皺とかが、存在を主張してくる。

変わらないものなんてないんだって。

何があったって、時は流れて、地球はいつも通り、回っていく。



「そんなの、使えるからに決まってるだろ。あいつら多分、今秘密警察に所属している中で一番働いているぞ。」


男の言葉にエナカは下を向く。
シーツをギュッと握り、唇を噛む。

考えてみれば当たり前だ。
元々身体能力の高いメモリーズと人間が同じ武器を持ったら、どう考えたってメモリーズの方が強い。


バリボリと音が聞こえる。
咽せたのにまだこりてないのか、男はまたせんべいを食べ始めている。



< 149 / 627 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop