佳き日に
「・・・これを、ですか?」
「そうだ。」
「私が、ですか?」
「そうだ。」
赤いフリフリのフリルがついた、ドレスだった。
落ち着け、と一度目を閉じる。
琥珀は期待を込めてもう一度目を開ける。
赤いフリフリのフリルがついたドレスがやはりそこにあった。
念を押すように雪が琥珀に「何でもやるって言ったよな?」と言ってくる。
そういわれるともう琥珀に勝ち目はない。
雪は銃を持っている。
命を失うよりは、このドレスを着る方がマシだろう、と判断した。
最悪だ、と心の中で呟く。
こんな服着るのは七五三の時以来だ。
着替える間は雪は部屋の外にでていてくれるみたいだ。
一応、女の子扱いはしてくれてるのか、と琥珀は少し感心する。
それにしても、まさか自分がこんなドレスを16歳で着ることがあるとは思わなかった。
何かの物語のお姫様が着るような服じゃないの、これって。
「終わったか?」
「は、はい。」
扉の外から雪の声がした。
慌てて返事をすると、扉が開き、雪が紙袋を突き出して立っていた。
「靴はこれを履いていけ。」
「靴?」
「そうだ。」