佳き日に
受け取った紙袋の中を覗いてみると、これまたヒールの高い靴が入っていた。
こんなヒールの高い靴は履いたことがない。
そして、靴もやっぱり真っ赤だった。
「ここから駅まで歩いていって、またここに戻ってこい。」
「・・・へ?」
「ここに戻ってきたら、今お前が着ている服はあのクローゼットに戻しておけ。それで、終わりだ。」
「駅まで歩いて、帰ってくるだけですか?」
「そうだ。」
歩いて帰ってくるだけなんて、けっこう簡単なことだ。
だけど、
「この格好で?」
「そうだ。」
この赤いフリフリのドレスは、ぶっちゃけかなり恥ずかしい。
雪にしか見られていないこの状況でも恥ずかしいのに、人前で歩くなんて死ぬ程恥ずかしいだろう。
知り合いに会ったりでもしたら、きっと恥ずかしさで死ねる。
言葉を失っている琥珀の様子を見て、雪は再度確認するように言う。
「何でもやるって、言ったよな?」
「・・・はい。」
これからは、人に頼み事をする時は一生のお願いだから、って言おう。
琥珀は諦めながらそう思った。
まぁ、殺されるよりは、恥ずかしい思いをして駅まで歩く方がまだいいじゃないか、と自分を納得させる。
もうこんなことチャッチャと終わらせてしまおう。
そう心に決めて、出発しようと出口に向かった時、雪に呼び止められた。