佳き日に


雪はそんな閏の気持ちなど知らずキョトンとした顔をしていた。

「別に、どっちでもいい。」

「・・・え?」

「生きられるんだったら生きてほしいが、死んだとしてもたいして困らないだろうな。」

「はぁ。」

「例えるなら、しゃもじみたいな。」

「ご飯をよそうやつですか?」

「そうだ。別にしゃもじがなくてもスプーンでもご飯はよそえるだろ。」

いつも通りフリーダムな雪の言葉に閏は「そうですね」しか言えなかった。

だが、雪が琥珀をどのように思っているのかは大体分かった。
雪は、琥珀を物のようにしか考えていない。

「雪先輩、琥珀さんは人間ですよ。」

閏の言葉に、雪は「そうだな」と苦い顔で呟いただけだった。

< 178 / 627 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop