佳き日に
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計画は大幅に狂ったが、なんとか鉛丹と桔梗とともにカフェのテラス席に座ることが出来た。
どこか端の方の席に雪と閏が変装して見ていてくれているはずだが、今の琥珀に確かめる余裕はなかった。
「本当にごめんなさい!」
顔を机にぶつける勢いで琥珀は頭を深々と下げた。
「別にいいですよ。兄さんも何か言ってあげてください。」
「あぁ、大丈夫。」
「すみません!」
琥珀がそうやって謝っていると、ウェイターが水を運んできた。
そこで会話は一旦中断する。
「本日のオススメはシフォンケーキです。」
にこりと笑みを浮かべたウェイターに琥珀は「じゃあそれで。」と注文する。
目の前に座る鉛丹と桔梗は何も注文しないようだ。
悪い事したな、と琥珀は思う。
先ほど、路地から大通りに出るところで、ヒールが道路の窪みにはまってしまった。
バランスを崩した琥珀はなんとか踏みとどまろうとはまっていない方の足に力をいれた。
それがいけなかったのだ。
地面につくと思った片足は、ゴリッと何かを踏んだ。
しかも、ヒールの部分で。
走馬灯で見た理科の先生の言葉を思い出す。
ヒールの靴で踏まれて、足の骨を折ってしまった男の人の話。
「ってぇぇぇ!!」
叫び声に驚いて後ろを振り向けば、さらに驚いたことに鉛丹が足を押さえてうずくまっていた。
もちろん、隣には桔梗がいて。
「ごめんなさい!」
そこから必死に謝り、お詫びしたいだとか様々な理由をつけカフェに来てもらった。
ただ、鉛丹と桔梗は琥珀が赤い女だと思っているからか、警戒している様子だった。