佳き日に
その愛も信条も
[2]
技術の進歩ってすげぇな。
小さな四角い液晶画面を見ながら鉛丹は思った。
タッチペンとボタンを使い操作する桔梗の目も楽しそうだ。
「文学作品も入ってるんですね。」
「英検とか漢検もな。」
「電子辞書ってすごいですね‼」
いつになく力強く桔梗は言った。
勉強に役立つから、と柳琥珀から貸してもらった辞書の虜になっている。
こんなに小さいのにどうしてここまでの情報が入るのだろう、と鉛丹も不思議に思う。
「兄さん。」
「何だよ。」
「柳琥珀と雪は、なんか変でしたよね。」
「あぁ、確かにあの本を選ぶセンスは疑ったな。」
「いや、そうじゃなくてですね。」