佳き日に
仕事を探すにしても、宿を探すにしても、いつも椿の店を頼りにしてきた。
それはなにも鉛丹と桔梗だけでなく、他のメモリーズにも言えることだろう。
その、椿の情報屋が襲撃された。
今まで何の根拠もないのに、椿は大丈夫だろうと思い込んでいたのだ、鉛丹も桔梗も、他のメモリーズも。
警察を見くびってたな、と鉛丹は思った。
『椿は逃げた、はず。無事かどうか分からないけど。でも店の近くで息を潜めてるらしい。』
「……」
菘の言葉に鉛丹も桔梗も胸に不安を募らせる。
『多分、この件は赤い女が仕組んだ。椿は赤い女のことを調べていたから。首を突っ込みすぎたんだ。』
深入り。
実際に二度以上も柳琥珀と接触した鉛丹と桔梗も深入りしていることになるのだろうか。
「その、椿のとこを襲撃したのは本物の赤い女の方か?それとも、柳琥珀の方か?」
『……分からない。』
背筋が寒くなった。